乳幼児の歯ブラシ事故について

乳幼児が歯磨き中に歯ブラシをくわえたまま転倒し、口腔内に歯ブラシを突き刺す等の事故が増えてきています。中には歯ブラシが頬に刺 さり、手術・入院となった事例も報告されています。一方で、そういった事故を聞いたことがあるという保護者は3割しかいませんでした。乳幼児が一人で歯磨きをする際には、保護者の方がそばに付き添い注意を払うことが必要となります。


<事例1 歯磨き中に歩いて転倒>
室内で歩きながら歯磨きをしていたところ、畳の部屋 で前方に転倒した。歯ブラシは畳の上に放り出されてい た。見たところブラシ全体に血液が付着していた。水を 飲むことができなかった。右咽頭に裂傷ができていた。

(事故発生年月:平成 24 年2月・2歳・男児・中等症)

<事例2 歯磨き中に物にぶつかる>
 兄に追いかけられて歯ブラシをくわえたまま走っていた
ところソファにぶつかって歯ブラシが喉に刺さった。嘔吐 し、鼻と口から出血した。右咽頭、口蓋垂の横に1cm程度 の裂創ができていた。
(事故発生年月:平成 24 年 11 月・1歳・男児・中等症)

<事例3 歯磨き中に椅子から転落>
洗面所で椅子(高さ 50cm)の上に立って歯磨きしていたと ころ椅子から転落した。歯ブラシのヘッドの部分から3cm ほどの所で2つに割れており、ヘッドの部分が口腔内に刺さっていた。歯ブラシを抜いたところ出血していたため、 救急を要請した。左上の臼歯内側、軟口蓋近傍に裂傷があった。

(事故発生年月:平成 23 年6月・1歳・男児・軽症)

自分で歯ブラシを持って歯磨きを始めることは、子どもの成長発育にとって大切なことで す。1歳前頃から、親が歯ブラシを使うのを見せると子どもも真似をして歯ブラシを口に入 れることを覚えていきます。歯磨きは楽しくて気持ちがよいという体験が正しい歯磨き習慣 につながっていきます。

一方で、はしやフォーク、鉛筆など先の尖った物で、子どもの口等に物が刺さるという事 故は発生しています。歯ブラシには特に尖った部分はなく、保護者は事故の危険性を認識し にくいものと思われます。しかし、深く刺さった場合には生 命が脅かされる危険性もあります。特に、事故が多発する年齢である乳幼児を持つ保護者は、 はしや歯ブラシなどの細長いものを口にくわえたまま転倒して生じる事故の危険性につい て、十分に認識する必要があります。

統計によると、4人に1人の乳幼児が歯ブラシにより実際にケガをした又はし そうになった経験があることが分かっています。

このほか、1歳児は特に歯ブラシを口にくわえたり、手に持ったまま歩き回ることが多く、1歳児の事故が最も多く報告されていることから、事故にあう危険性 が高い年齢であることが分かります。

むし歯予防のため、歯磨きは大切な生活習慣の一つですが、歯磨き中の歯ブラシによる事故は思いがけず大きなケガになることがあります。事故は一瞬の間に起こります。発育途上 にある乳幼児は身体のバランスが悪く転倒しやすいため、「歯磨き中は保護者の方がそばに 付き添い注意を払う」ことが大切です。

当院では歯ブラシ事故を予防するためにも、口に入れる部分が柔らかく曲がるタイプの歯ブラシなども取り扱っています。それを使用したから必ずしも事故が起きないというわけではありませんがもし心配な保護者の方はいつでもご相談ください。

参考 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/130328kouhyou_1.pdf

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